小話

この世の何処かに“一つ目”の人間が住む世界があるという。
その話を信じた男はその世界を探しに行きました。
『一つ目の人間を見せ物にすれば
 きっとたんまり稼げるに近いない。
 そうでなくても売り飛ばせば金になる』

男は幾つもの野と幾つもの川と
幾つもの山を越えて探しました。
そして『あの海の向こうに一つ目の人間が住んでいる』
という話を聞きました。
男は海を越えて
遂に辿りつきました。
男は早速一つ目の人間を捕まえようとしました。
しかし、逆に沢山の一つ目の人間に捕まってしまいました。
男は『世にも珍しい二つ目の人間』
というフレーズで見せ物にされました。
男は毎日、一つ目の人間に物珍しく見られました。
毎日毎日、一つ目に囲まれている男は
気がおかしくなりそうでした。
そして遂に男は自分の片目を潰してしまいました。
男は一つ目の人間が正しい気がしてきたのです。